「看護師の仕事は大変」という言葉をよく耳にします。
私は現在、総合病院で男性看護師として働いています。
私が思う看護師の苦労と、逆に魅力と感じる部分についてご紹介します。
🟨 この記事はこんな方におすすめ
- 看護師という職業に興味がある
- 看護師の苦労と魅力を知りたい
今回は以下の内容についてご紹介します。
看護師の退職理由TOP5
看護師になるハードルは、それほど高くはありません。実際に、看護師を養成する大学や専門学校は増加傾向にあり、非常に多く存在しています。
看護師国家試験の合格者は、年々増加傾向です。2023年の看護師国家試験の合格者数は59,769人でした。
ここ数年のデータを見ても、毎年5.8万人前後の新人看護師が誕生しています。
しかし、看護師業界は常に人手不足と言われています。
その背景には様々な要因が挙げられます。代表的な要因となるのが、「看護師の離職率」の高さにあります。
🟨 看護師の退職理由TOP5
1位 出産・育児のため
2位 結婚のため
3位 他施設への興味
4位 人間関係が良くない
5位 超過勤務が多い
看護師の大部分を占めるのは、やはり女性です。出産や育児、結婚といったライフイベントにより、医療現場を離れてしまう人が多いのが現状です。
🟨 ネガティブな退職理由TOP5
1位 人間関係がよくない
2位 超過勤務が多い
3位 通勤が困難
4位 休暇がとりづらい
5位 夜勤の負担が大きい
もし看護師が「働きやすい」環境であれば、個々のライフイベントが落ち着いた頃に、“復帰しよう”となるはずです。
しかし、実際にはそうならないケースが多いようです。
総合病院で男性看護師として働く私の体験も含めて、現状についてご紹介します。
超過勤務が多い
苦労という点では、まずは残業時間の長さが挙げられます。
「超過勤務をした」と答えた看護師は全体の78.4%で、平均は月17.4時間とのことです。
※日本看護協会「2021年 看護職員実態調査」
つまり、約8割の看護師が超過勤務をしているということになります。
背景の一つには、「入院患者の高齢化」があります。患者が80代、90代はすでに当たり前の時代になってきています。
80代で「病気が何もない」ことはあり得ません。入院患者のほとんどが、「併存疾患ありき」です。
病気だけでなく、認知症や要介護認定をもつ患者の割合も年々増加傾向にあります。生活上の支援もますます必要になってきています。
看護師は、患者の入院生活全般を支援します。
業務内容としては、体調管理や投薬、検査・手術の準備、生活支援などが含まれます。
さらに、立ち仕事であることや介護面での負担の大きさから、「腰痛」の発症率が高いことが看護師の特徴です。
認知機能や身体機能の低下により、患者が入院中に転倒したり、薬を飲みこぼしたりした場合でも、「看護師の管理責任」とされるケースがあります。
このような心身への負担感が、看護師の離職行動に繋がっている事例も多いと思われます。
このような患者を対象として、先に述べた看護業務を「8時間」の勤務時間内にこなすのは、かなり厳しいのが現状です。
子育て中の看護師は、仕事と家庭の両立に苦労する場面も多いと思います。
実際に、30代以降の中堅層が手薄になるのは、当然なのかもしれません。
看護以外の業務の存在
職場が大きければ大きいほど、職場環境の改善を目的とした「委員会や係活動」が活発に行われます。
看護業務に加えて、これらの活動でも成果が求められます。これは看護師の負担感と同時に超過勤務を増加させる大きな要因にもなります。
🟨 代表的な委員会・係活動
- 教育に関すること
- 感染対策に関すること
- 医療安全に関すること
- 記録や業務改善に関すること
などが挙げられます。
中堅看護師になると、看護業務に加えて、後輩指導や委員会活動でも中心的な役割を担うことになります。
この他にも、定期的な学習会の開催なども看護師が担当します。
夜勤の存在
病床をもつ病院に勤めた場合、基本的には夜勤が出来ることを前提として採用されます。
以前は「3交代制(日勤・準夜・深夜)」が主流でしたが、現在では多くの病院で「2交代制(日勤・夜勤)」が導入されています。
2交代制は、出勤回数が減り、業務間インターバルが確保しやすいというメリットがあります。
一方で「16時間」という長時間勤務になるデメリットがあります。
夜勤の詳細については、こちらの記事にまとめています。
夜間はたとえ仮眠をしたとしても、昼間ほどの集中力は得られず、頭がぼんやりした状況が続きます。その状態で長時間かつ、ミスは許されないという環境下で働くことになります。
看護師経験10年を超えた私でも、夜勤の拘束時間は長いと感じるし、精神的な負担は大きいと感じます。
「消灯後は患者が寝てるから、ゆっくりできるよね?」といった声もあります。
私も病棟勤務を経験するまでは、そのように思っていました。健康な人間ほど夜はよく眠れます。反対に健康とは言えない入院中の患者は、夜は熟睡できません。
その結果、何度もトイレに起きます(その度に要介助)。認知症の方は、真夜中に「家に帰る」などと急に帰宅しようとします。夜中だからといって、「落ち着いた勤務」とは、言いづらいのが現状かと思います。
配置転換がある
複数の病棟をもつ施設では、看護師の「配置転換」が行われます。
🟨 配置転換のメリット
- 看護師のキャリア形成を促進する
- 部署独自の風土形成を防ぐ
といったことが挙げられます。
実際に配置転換を経験すると、また一から業務を覚えたり、人間関係を構築したりと、苦労します。
部署が変われば働き方も変わり、生活リズムに影響を及ぼします。
このような変化が、数年おきかつ強制的に求められる看護師には、環境変化に対する柔軟性やある程度のストレス耐性が求められると言えるでしょう。
配置転換による環境変化や心身へのストレスは、周囲から理解されにくい部分があります。
個人的な意見ですが、
配置転換により、看護師の特定領域における専門性は失われているように思います。
専門性のなさは、看護師の立場を弱める原因になっているようにも感じます。
続いては、看護師の魅力について解説します。
【看護師の魅力】安定した収入
看護師免許は国家資格です。日本の社会人1年目(大卒)の平均初任給が21万200円とのデータがありますが、新卒看護師の初任給は26〜27万円(2022年病院看護・助産実態調査)です。
夜勤が始まれば、初任給に夜勤手当が追加されます。
20代でありながら、日本のサラリーマンの平均年収もしくはそれ以上の年収を得ることができます。
単身者であれば、生活面におけるお金の心配はほとんどないと言えると思います。働き方によっては、趣味や海外旅行に投資する余裕も生まれるでしょう。
結婚し、子供が産まれた場合でも、生活するだけなら困らない程度の収入となります。
収入面における安定性を考慮すると、男性にも非常におすすめな職業だと思います。
さらに、個人のスキルアップを職場が積極的に支援してくれるところも存在します。
資格取得や研修参加、大学院への進学に関しても金銭的な援助がある施設があります。就職後のスキルアップを考える人にとっても、経済的な支援を受けやすい職種と言えるのではないでしょうか。
【看護師の魅力】自分時間を確保できる
多くの看護師は、シフト制の勤務形態です。夜勤があることで、平日にも休みが確保できます。夜勤の前後で活動できれば、より昼間の時間が確保しやすくなります。
子育て中の方でも、計画的に子どもの病院受診や、金融機関での用事を済ませることが可能です。
日勤の残業が多いというデメリットはありますが、それ以上に夜勤があることでの「昼間の自分時間」が確保できる点は、大きな魅力と言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、実際に総合病院で男性看護師として働く私が考える、「看護師の苦労」と「看護師の魅力」についてご紹介しました。
看護師は、患者やその家族に直接関わる仕事です。感謝される機会も多く、やりがいや達成感が得られやすい職業であるとも言えます。
もし職業選択を検討している方であれば、ぜひ「看護師」を選択肢に挙げてみることをおすすめします。
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