2015年に始まった、看護師特定行為研修。
これまで医師にしか許されなかった医行為を
看護師が行えるようになり、早10年。
「研修は修了したけど、特定行為まで到達しない」
修了生がいるのも現状です。
今回は、病院で特定看護師として働く私が、
特定行為の実施までに行ったことを解説します。
🟨 この記事を読むと
- 特定行為実施までの障害が明確になる
- 特定行為実施するまでの手順がわかる
特定行為に立ちはだかる壁
研修を修了し、いざ実践を!
と思っても、思うように進まないのが、特定行為です。
壁その1 「医師の理解が不足している」
特定看護師は、研修中に特定行為実施までの流れを学習します。
一方で、監督する立場である医師は、研修内容を知る機会は限定されます。
そのため、理解が不十分である可能性が高いと言えます。
- 特定行為研修そのものの理解が曖昧
- 特定看護師が修了した区分を把握していない
- 特定行為実施に至るまでの過程が分からない
「自分たちの仕事をやってくれるらしい」
といった理解度では、到底特定行為の実施には繋がりません。
医師も特定看護師も、タスクシフト・シェアした先のイメージが
ぼんやりしていることが理由の一つと言えます。
壁その2 「特定行為が求められていない」
タイムリーな対応が必要なICUや救急外来では、
比較的、特定行為のニーズが高いと言えます。
一方で、一般病棟などでは、その必要性を感じにくいことも事実です。
「特定行為をしなくても、日々は過ぎていく」と言うことです。
壁その3 「手順書」が分かりにくい
簡単そうに見えて、意外と厄介なのが「手順書」です。
特定看護師だからと言って、何でもやっていいわけではありません。
手順書という名の、医師の包括指示が必要です。
※包括指示:「こんな状況なら、このように対応してね」というもの
🟨 手順書の内容
特定行為の対象は、「状態が落ち着いている患者」に限定されている。
落ち着いていると判断する観察項目や、「実施後の評価」など、確認するポイントが多い。
特定行為の実施までに、
この手順書を整備して、
医師の承認(運用開始)を受けるプロセスを踏まなければなりません。
特定行為の実施を阻む壁の一つになります。
私が特定行為を行うまでにやったこと
🟨 キーとなる医師に理解してもらう
結局のところ、医師の包括指示が必要です。
一度に全てを説明するのは、時間的にも厳しいため、
繰り返し話題にすることで、特定行為のプロセスを理解してもらいました。
🟨 手順書を整備する
厚生労働省で提示している手順書の型を活用します。
施設によっては、そのまま活用できない場合があります。
医師と相談しながら、自施設にあったものを作成していきます。
このプロセスで、医師にも特定行為の流れを理解してもらうことができます。
🟨 職場の特徴に合った特定行為に絞る
研修を修了すると、複数の特定行為が可能になる場合があります。
ですが、実際には全ての行為が現場で活用できるわけではありません。
まずは、自部署で実践しやすそうな行為に絞ることです。
一つでも実践できると、少しずつコツを掴むことができます。
🟨 医師の処置に同席する
医師が特定の処置をするタイミングがあります。
繰り返し、立ち会うことで手技を学びながら、
医師との信頼関係を築いていきます。
「その処置は特定看護師に移譲していく」という流れが生まれます。
🟨 医師がいないタイミングを見つける
医師が自分で処置を行えないタイミングがあります。
「できないから、やっといてくれる?」
こうなれば、ためらうことなく特定行為が実施可能となります。
特定行為をやって分かったこと
一度軌道に乗ると、そのあとは簡単です。
特定行為が行えることで、
医師がいないタイミングで、わざわざ医師に連絡する必要がなくなります。
(通常)異常の発見→医師に報告→医師が診察→対処する
(特定行為)異常の発見→対処する→事後報告
一見すると、特定行為を行う分
看護師の業務量が増えているようにも見えます。
実際には、「医師への報告」と「診察までの観察」に
看護師は時間と労力を割いているはずです。
この「業務」が軽減されるため、体感としては非常に楽になったように感じます。
ぜひ、特定行為実施までの準備を乗り越えて、
実践段階へ移行してしてもらいたいと思います。
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