特定看護師になる方法|期待される役割について解説

特定看護師

2015年より、看護師が医行為の一部を手順書に基づき自立して行える「特定行為研修」が始まりました。

所定の研修を修了した看護師は、これまで医師や歯科医師しか行うことができなかった医行為の一部を、看護師の判断で行えるようになりました。

2020年には保健師助産師看護師法が改訂され、特定行為研修修了者(以下、特定看護師)は一定の加算対象となりました。

今後さらなる活躍が予想される「特定看護師」について解説していきます。

🟨 この記事はこんな方におすすめ

  • 特定看護師ができることを知りたい
  • 特定看護師になる方法を知りたい
  • 特定看護師に期待される役割を知りたい

今回は以下の内容についてご紹介します。

特定看護師にできることとは?

人体に危害を及ぼすリスクが高い「医行為」は、これまで基本的には医師、歯科医師にしか行えませんでした。当然ですが、患者に与える侵襲性やリスクを考えれば、十分な医学教育を受けた者でなければ認められていなかったことにも納得です。

一方で、臨床経験を積んだ看護師が、更なる研修を受講することで専門性を高めた場合、医師や歯科医師と変わらない安全性が担保できるという理屈にも納得できます。

特定看護師は研修を通して、病気やその治療に関してより深く理解できるように教育されます。ただし、何でも医師や歯科医師と同じように行えるという訳ではありません。

特定行為研修の修了に伴い、特定看護師が行えるようになる「特定行為」は、21区分38行為に限定されています。

21区分38行為 一覧

 特定行為区分の名称(21区分) 特定行為(38行為)
  1呼吸器(気道確保に係るもの)関連  1経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
  2呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連  2侵襲的陽圧換気の設定の変更
  3非侵襲的陽圧換気の設定の変更
  4人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
  5人工呼吸器からの離脱
  3呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連  6気管カニューレの交換
  4循環器関連  7一時的ペースメーカの操作及び管理
  8一時的ペースメーカリードの抜去
  9経皮的心肺補助装置の操作及び管理
 10大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
  5心嚢ドレーン管理関連 11心嚢ドレーンの抜去
  6胸腔ドレーン管理関連 12低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
 13胸腔ドレーンの抜去
  7腹腔ドレーン管理関連 14腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。)
  8ろう孔管理関連 15胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
 16膀胱ろうカテーテルの抜去
  9栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 17中心静脈カテーテルの抜去
 10栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 18末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
 11創傷管理関連 19褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
 20創傷に対する陰圧閉鎖療法
 12創部ドレーン管理関連 21創部ドレーンの抜去
 13動脈血液ガス分析関連 22直接動脈穿刺法による採血
 23橈骨動脈ラインの確保
 14透析管理関連 24急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析 濾過器の操作及び管理
 15栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 25持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
 26脱水症状に対する輸液による補正
 16感染に係る薬剤投与関連 27感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
 17血糖コントロールに係る薬剤投与関連 28インスリンの投与量の調整
 18術後疼痛管理関連 29硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
 19循環動態に係る薬剤投与関連 30持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
 31持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
 32持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
 33持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
 34持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
 20精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 35抗けいれん剤の臨時の投与
 36抗精神病薬の臨時の投与
 37抗不安薬の臨時の投与
 21皮膚損傷に係る薬剤投与関連 38抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整

これらの特定行為は、数ある医行為の中でも、手技を訓練することで比較的安全に実施できるものとされています。

「比較的安全な行為」とされていますが、患者への侵襲性があることに変わりはありません。安全に実施するためには一定のトレーニングを積む必要があります。

特定看護師になる方法とは?

厚生労働省が指定した施設で、所定の研修を受講する必要があります。研修には講義・演習・実習が含まれており、最終的に筆記試験に合格する必要があります。

令和5年8月時点の指定研修機関

参照:【特定行為に係る看護師の研修制度】指定研修機関について

🟨 研修内容

共通科目(250時間):全ての区分に共通する基本的な知識を習得する※研修受講者は全員必須

区分別科目(5~34時間):区分ごとに異なる知識をより深く習得する※選択した区分数に応じて研修時間が変動する

特定看護師は、区分別科目の選択状況によって行える特定行為が異なります。

一方で、共通科目は全員必須科目となるため、研修修了者のスキルの底上げや質の担保に繋がります。

🟨 共通科目は全7科目で構成される

  • 臨床病態生理学(解剖学、病理学、生理学を含む)
  • 臨床推論(診断プロセス、症候学、疫学、医療面接、各検査の理論などを含む)
  • フィジカルアセスメント(身体診察含む)
  • 臨床薬理学(薬物動体、主作用、副作用、相互作用含む)
  • 疾病・臨床病態概論(主要疾患の診断と治療含む)
  • 医療安全学/特定行為実践(医療倫理、ケアの質、多職種協働、手順書管理含む)

特定看護師に期待される役割とは?

① 医師業務のタスクシフト

2024年度から、医師の時間外・休日労働時間の上限規制が適応されました。従来の働き方では、十分な医療提供が続けられない状況となったわけです。

そこで、「医師業務をタスクシフト」する必要があり、その対象となるのが特定看護師です。

一見すると、医師の業務を特定看護師が肩代わりしているようにも見えます。

しかし、これは看護師の「診療の補助」業務の拡大、とも捉えることができます。

看護師が自立して実施できる行為の範囲が拡大した、とも言えるわけです。

② 高い水準での看護実践

特定行為研修では、共通科目だけでも250時間の学習が必須となっています。

特定行為21区分38行為を実践するには

「実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が必要」

特定看護師は、「特定行為」が行えるだけではありません。

基礎的な知識と区分ごとの専門的な知識を深めた看護師と言えます。

日々の看護実践の中で、その専門性を発揮することが求められていると言えます。

特定看護師は、医師業務の一旦を担いますが、「看護師」であることに変わりありません。

「特定行為」をいかに日々の看護実践に取り入れていくか、習得した知識・技術を「特定行為以外」の場面で活かしていくかが、活躍の鍵になるのではないでしょうか。

下記のリンクより、

実際に特定看護師として働く私の体験談をご紹介します。

併せてご覧いただけると、より参考になると思います。

関連記事>> 医師のタスクシフト、なぜ特定看護師が医行為を行うのか

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