日本の高齢化は急速に進行しています。
増加する高齢者に対し、それを支える医療スタッフは慢性的に不足しています。
その打開策の一つとして、
今注目されているのが「看護師特定行為研修」です。
実際に働きながら特定行為研修を受講した私の経験も踏まえて、
実際の様子についてご紹介します。
🟨 この記事はこんな方におすすめ
- 特定行為研修について知りたい
- “働きながら研修受講”実際を知りたい
- 研修修了後の働き方について知りたい
今回は以下の内容について解説します。
なぜ今、看護師に「研修」をするのか
日本の少子高齢化は急速に進行しています。
64歳以下の「生産年齢人口」が急激に減少する一方で、
65歳以上の「高齢人口」が急激に増加しています。
2025年には、団塊の世代が75歳を迎えることで、
さらに医療需要が高まると予測されています。
これまで元気だった人も、75歳を超えると医療需要が一気に高まると言われています。
これまでの医療体制では、高まる医療需要に対応できなくなる可能性が高いと言えます。
そんな状況の中、今後の医療を支える上で重要な役割を担うのが、「看護師」です。
【特定行為研修】
「看護師」と言っても、キャリアはそれぞれです。
新人からベテランまで幅広く、個々のスキルにも大きな差があります。
専門職として成長するのを待つだけでなく、
研修により、看護師の質の底上げを図る目的があります。
これからの看護師には、より多くのタスクを効率的にこなしながら、複雑な業務に対応していく能力が求められています。
🟨 特定行為研修制度
「特定行為に係る看護師の研修制度」は、保健師助産師看護師法に位置付けられた研修制度で、2015年10月から開始されています。手順書により特定行為を行う場合は、本研修の受講が必要となります。研修を修了した看護師には、患者さんの状態を見極め、タイムリーな対応をすることなどが期待されています。
出典:看護師の特定行為研修制度
どんな研修をするのか
研修内容は、大きく「共通科目」と「区分別科目」の2つに大別されます。
研修修了のためには、この2つの科目を修了する必要があります。
【共通科目】
共通科目では、全ての特定行為に共通して必要とされる基本的な知識の習得を目指します。
「e-ラーニング」を活用したオンライン研修が可能です。
共通科目 | 学習内容 | 所要時間 |
臨床病態生理学 | 解剖・薬理・生理 | 30時間 |
臨床推論 | 臨床診断学・検査学・症候学 | 45時間 |
フィジカルアセスメント | 身体診察、診断学 | 45時間 |
臨床薬理学 | 薬剤学、薬理学 | 45時間 |
疾病・臨床病態概論 | 主要疾患の臨床診断・治療 | 40時間 |
医療安全学/特定行為実践 | 医療倫理、安全管理、ケアの質保証、関連法規、意思決定支援、手順書作成など | 45時間 |
各科目の筆記試験に合格し、演出・実習を経て修了となります。
【区分別科目】
区分別科目では、特定行為の各区分毎に必要とされる専門的な知識の習得を目指します。
区分別科目(21区分) | 所要時間 |
呼吸器(気道確保)関連 | 9時間 |
呼吸器(人工呼吸療法)関連 | 29時間 |
呼吸器(長期呼吸療法)関連 | 8時間 |
循環器関連 | 20時間 |
心嚢ドレーン管理関連 | 8時間 |
胸腔ドレーン管理関連 | 13時間 |
腹腔ドレーン管理関連 | 8時間 |
ろう孔管理関連 | 22時間 |
栄養に係るカテーテル管理関連(CVC) | 7時間 |
栄養に係るカテーテル管理関連(PICC) | 8時間 |
創傷管理関連 | 34時間 |
創部ドレーン管理関連 | 6時間 |
動脈血液ガス分析関連 | 13時間 |
透析管理関連 | 11時間 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 16時間 |
感染に係る薬剤管理関連 | 29時間 |
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 | 16時間 |
術後疼痛管理関連 | 8時間 |
循環動態に係る薬剤投与関連 | 26時間 |
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 | 26時間 |
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 | 17時間 |
区分別科目も共通科目と同様に、
e-ラーニングを活用したオンライン研修が可能です。
続いて演習・実習があるところも同様です。
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働きながら研修受講は可能か
演習や実習を除き、講義はe-ラーニングを活用した自己学習が可能です。
選択する区分数にもよりますが、
働きながらの研修受講が可能です。
私は実際に、働きながら1年間かけて研修を修了しました。
勤務調整が必要な場合もあるため、上司の理解は必須です。
🟨 研修を受講した動機
私の場合は、自施設が特定行為研修の「指定研修機関」になったため、
受講のハードルが下がったことが大きな要因でした。
看護師として働く中で、
「自分の判断に自信を持ちたい」
と思ったこともきっかけの一つです。
🟨 研修受講のメリット
- 共通科目から再学習し、曖昧だった知識が整理できる
- 質の保証された研修のため、研修修了後は自分の判断に自信と根拠が持てる
- 特定看護師となり、周囲から一定の信頼が得られる
- 特定行為が行えることで、患者に対してタイムリーな対応が可能になる
🟨 研修中に大変だったこと
①「演習」
事前課題が多く、講義で得た知識を実践と関連付けるトレーニングが必要
②「実習」
実際の患者に対して、医療面接を行い、鑑別診断を挙げる。また医師の指導下で特定行為を実施し、その度に症例報告書の作成が必要
e-ラーニングを活用したオンライン講義は、
自宅での受講が可能で、通勤もなく快適でした。
一方で、共通科目・区分別科目の「演習」には苦労しました。
事前課題が多く、講義で得た知識をもとに事例について検討します。
知識だけ得ても、それほど実践には役には立ちません。
実戦と関連付けて考えられるようになることで、初めて活きた情報になります。
「演習」は、知識を実践で活用できるようにトレーニングする段階と言えます。
「実習」では、実際の患者と関わるため、
必要な情報を自分から「取りに行く」姿勢が必要です。
新たなスキル獲得を目指すプロセスです。
慣れるまでは大変さを感じる場面もありますが、ある程度は仕方のないことかもしれません。
研修修了後の働き方
同じ「研修修了生(特定看護師)」であっても、
修了した特定行為区分により、実践できる内容が異なります。
所属部署はそのままに、
「日々の看護実践の場で研修の学びを活かす」
という働き方をされる方が多いのが現状です。
「特定行為ができる」という強みを活かせる部署への配置転換や、
何らかのチームに所属して、組織横断的に活動する場合もあります。
🟨 実際に特定看護師になってみて
- スタッフからの「患者の病態判断に関する相談」が増加した
- 「院内急変対応チーム」に所属することになった
- 外部講師の依頼がきた
- 配属部署で特定行為を実践
看護師と言えど、
自信を持って患者の病態判断ができる人ばかりではありません。
医師に相談しにくいことも、
特定看護師であれば気軽に相談できる、というメリットがあります。
同じ部署に、気軽に相談できるスタッフがいるのは心強いと思います。
特定看護師が増えれば、それだけ看護師が安心して働ける職場になるとも言えそうです。
私の場合は、研修を受講したことで、
自身のスキルアップだけでなく、働き方にも影響を与えてくれました。
自己のスキルアップを図りたい!
やりがいを持って働きたい!
と感じている方には、是非おすすめしたい研修です。
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