病院で勤務する看護師には夜勤があり、
その勤務時間は16時間にも及びます。
長時間労働は、心身への負担が大きく、健康リスクを高めることが知られています。
今回は、そんな看護師の夜勤の現状についてです。
🟨 この記事はこんな方におすすめ
- 看護師の夜勤の現状を知りたい
- 夜勤による健康被害について知りたい
- 夜勤による健康被害を軽減する方法を知りたい
今回は、以下の内容をご紹介します。
看護師の夜勤の現状
入院患者を24時間サポートするためには、
交代制勤務が必要不可欠です。
一方で、「夜間業務は有害業務」なのは言うまでもありません。
「看護師だから仕方ない」という声も耳にします。
しかし、2交代制を導入する病院では、
病棟看護師は月平均、約5回もの夜勤を担っています。(日本看護協会)
これはあくまで平均であり、5回/月以上の夜勤をこなす看護師も存在します。2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書
現在、看護師の勤務形態で
最も多いのが「2交代制勤務」です。
2交代制勤務では、
1回の夜勤時間が16時間以上にも及びます。
2交代制勤務を導入している病院は、全体の64.5%です。
次に多い「3交代制勤務」は22.6%です。
2交代制勤務シフト
日勤 | 夜勤 |
8:30~17:00 | 17:00~9:00 |
3交代制勤務シフト
日勤 | 準夜勤 | 深夜勤 |
8:00~16:30 | 16:00~24:30 | 0:00~8:30 |
2交代制勤務では、1回の夜勤で3交代制勤務の「準夜勤・深夜勤」を連続して行います。
これは、シフト上2日分の勤務を1回の夜勤で担当することになります。
2交代制勤務は、出勤回数が少なくなり、勤務間インターバルを確保しやすいというメリットがあります。
交代制勤務で働く看護師にとって、
勤務間インターバルは非常に重要なポイントです。
ただし、長時間の勤務は心身を非常に酷使するため、
「離職」につながるリスクがあります。
海外と比較した日本の夜勤の現状
参考に、海外の看護職と働き方を比較してみます。
例えばアメリカや欧州では、「12時間」夜勤が主流です。
これは拘束時間が長くなるほど、疲労やストレスが増大し、判断力が低下するためです。
看護師は命に直結する業務を含むため、判断力の低下は医療事故に繋がる危険があります。
特に深夜の時間や、明け方には強い眠気が出現します。
意識的に緊張感を保ち、この眠気を乗り切っている
というのが看護師の現状だと感じます。
しかし、どんなに緊張感を維持しようとしても、判断力の低下は避けられません。
実際に行われた研究
- 8時間夜勤に比べて、12時間夜勤では安全上のリスクが8%増加
- 8時間夜勤に比べて、16時間夜勤では安全上のリスクが3倍に増加
16時間夜勤を行った場合の作業能力は、飲酒運転と同じレベルです。
酔った人間が、点滴を含むさまざまな処置を実施すると考えたら、
非常に危険な勤務形態であると言えます。
それでも日本では、夜間の大きな医療事故が頻発していません。
これは、看護師たちの「苦労と責任感の賜物」としか言いようがありません。
現在、日本では夜勤時間を短縮させるべく取り組みが始まっています。
日本看護協会が提唱する「夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、
1回の勤務を13時間以内にするように推奨しています。
さらにガイドラインの中では、「仮眠」の重要性が示されています。
仮眠の重要性
🟨 「仮眠」の効果について
- 疲労回復と明け方の眠気解消
- 生体リズムの維持(アンカースリープ効果)※アンカースリープ効果:眠る時間の半分を決まった時間(コアタイム)、残り半分を眠れるときに眠ると負担が軽減される
- 生活時間の有効活用(夜勤明けの昼間の睡眠時間短縮)
- 長期的に夜勤を続けた時の健康影響を防ぐ
参考:日本看護協会コラム
適切な仮眠により、疲労や判断力の低下を防ぎ、医療事故を予防することが期待できます。
さらに、夜間の覚醒時間を短くすることで、
看護師の健康被害の軽減が期待できます。
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夜勤による健康被害とその原因
そもそも、なぜ夜勤は人体にとって有害なのでしょうか。
「夜の方が体の調子がいい」と言う人もいるけれど…
それは本当にあり得るのか?
【原因】サーカディアンリズム(体内時計)の存在
人間も動物である以上、どうすることもできない理由に「サーカディアンリズム」の存在があります。
「日の出と共に覚醒し、日没と共に休む」
という人間の生理機能です。
昼:交感神経優位→活動に適した状態
夜:副交感神経優位→睡眠や休息に適した状態
夜勤は、このサーカディアンリズムに逆らって仕事をすることになります。
この働き方は、圧倒的な疲労を蓄積します。
夜勤を繰り返すことで、”ツケ”が溜まり体調を崩します。
🟨 健康被害1:発がんリスクの上昇
長期的に夜間に人工照明に暴露すると、
乳がんや前立腺がんの発生リスクが高まります。
その他、子宮がん、直腸がんのリスクも高まるとされています。
その背景には、夜の睡眠中に分泌されるはずの「メラトニン(抗酸化作用や抗腫瘍作用がある)」
分泌が抑制されるためと言われています。
🟨 健康被害2:ホルモンバランスが崩れて月経異常・睡眠障害など
性別に関わらずホルモンバランスの崩れや睡眠障害は、健康被害を増大させます。
さらに、「生活習慣病」「メタボリックシンドローム」を助長します。
🟨 健康被害3:年中「時差ぼけ」状態
人間は1日に2時間以上のリズム変化に対応できません。
夜勤を行う看護師は、言うなれば年中「時差ぼけ」の状態と言えます。
本来の生理機能に反した、このような働き方は当然、寿命にも影響を及ぼします。
【研究】2万人の交代制勤務者を対象※フランス
「夜勤は寿命を10年以上縮める」と報告されました。夜勤は寿命と引き換えと解釈できてしまいます。
🟨 健康被害4:その他
「胃炎」「十二指腸潰瘍」「腰痛症」などが代表的です。参考:2022年度 夜勤実態調査
私は、10年以上「2交代制勤務」の施設で働いています。
夜勤明けには「お腹が張る」感覚をよく経験します。
長時間の緊張感と立ち仕事により、「腰痛」もよく経験します。
長期的な夜勤業務により、不調をきたすという報告には体感的にも納得です。
腸(お腹)が張ることで、腰痛を引き起こす原因にもなります。
夜勤後には、少しでも体に優しい食べ物が選べるといいですね。
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健康被害を軽減する方法
夜勤による健康被害を、全くのゼロにすることは不可能です。
それでも、生活にちょっとした工夫を取り入れることで、
健康リスクを軽減できる可能性があります。
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🟨 夜勤の健康被害を軽減する方法
- 生活リズムの維持【やはり重要】
- 体内時間を狂わす食事を避ける
- 睡眠の質の確保
日勤と夜勤が混在する職業で、
生活リズムを保つことは、かなり厳しいと言えます。
それでも、長期的には「朝同じ時間に起き、夜同じ時間に寝る」
という基本的な生活習慣がとても重要です。
しかも夜勤明けは、食欲の際限がなくなり暴食に走る傾向があります。
夜勤明けは、心身が疲労していることもあり、
ちょっとした休息のつもりが、爆睡してしまうことがあるかと思います。
ご存知の通り、睡眠前の暴食は、疲労回復を妨げて睡眠の質を著しく低下させます。
夜勤前後の食生活を整えることは、健康の維持には必須と言えます。
どうしても夜勤をやりたくない人へ
現在、看護師はさまざまな職場・分野で必要とされています。
どうしても夜勤が辛いという方は、
配置転換を相談したり、場合によっては転職を検討することをお勧めします。
体調を崩してまで、あなたが病棟看護師を続ける必要はないと考えます。
🟨 夜勤のない看護師の職場
- 外来看護師や手術部看護師
- 開業医やクリニック
- 美容クリニック
- 福祉施設
看護師の資格を持っていれば、夜勤のない職場を選択することが可能です。
まとめ
看護師の勤務形態は、「2交代制」勤務が主流です。
「準夜勤+深夜勤」で構成される2交代制勤務は、勤務時間が16時間にも及びます。
夜勤と上手に付き合うためには、
基本的で、規則的な生活を維持するように心掛けることが大切と言えます。
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